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な母親である娘は子供に歌ってやることができません。「私が歌っても体を揺らさないし、知らん顔してこちらを見てくれないわ」と、寂しそうに言いました。
音楽は心の宝石です。聴覚障害の子供たちに、どうしても音楽を楽しむ術を教えて欲しいと思います。大きくなったとき、彼らもカラオケを歌いたいと思うでしょう。テーブを聞くこともあるでしょう。娘も時折、音楽テープを聞いていますが、ときどき、「心がウキウキする」とか、「頭が気持ちがいい」と言っていたことがありました。
心細い思いをしながら病院回りをしていた昔、「どうやって育てていけば、教えていけば…」とオロオロし、ヒステリックになりガムシャラになりながら、それでも三十年近く過ぎ去ろうとしています。
聴覚のない子供を育てることは、想像を絶する大変なことですが、「お母さんはいつもニコニコしていたね、そしてボクのことを待っててくれたね」と今になって言われたときほど、嬉しいことはありませんでした。
どんな子も神の子、私たちに授けてくれたのです。小さいときは、いっぱいいっぱい抱っこしてあげましょう。アファール猿人から四〇〇万年。子供が親から離れていくのに何年もかかりません。一生のうちの二年か三年を膝に抱き上げてお話しをしてあげましょう。
とりとめのない文になりましたが、私が感じたほんの一部です。またこの度、私のような者にも、聴覚障害者教育福祉協会より表彰をしていただき、感謝の念に耐えません。誠にありがとうございました。これで区切りと思わず、これからも子供たちを見守りたいと思います。

 

 

 

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